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留学体験記

【ドイツ】留学3か月レポート

【派遣先】ルール大学ボーフム 【留学期間】2019年4月~2020年3月
経済学研究科 S.Yさん

 

はじめに

 私は学生であると同時に有職者でもあります。普段は地元の市役所へ勤務し、夜間に大学院(長期4年履修)へ通っていました。このたびの留学にあたり、職場を1年休職し家族(妻)とともに渡独しています。福島大学からの留学でも稀なケースだと思いますが、自身の体験をもとに留学3か月の期間について報告します。

ドイツと研究について

 ドイツは、ヨーロッパの中央に位置し、国土面積は日本よりやや小さく、人口は約8千万人の国です。日本と同じ四季があるとも言われています。3月下旬に到着した際の気温は一桁台で肌寒く感じられましたが、夏が近づくにつれて気温が20度前後まで上がり過ごしやすくなってきました。昼の時間も長くなり、午後9時過ぎまで明るいです。どの街にもオープンカフェがいたるところにあり、日の光を浴びながらくつろぐドイツ人が印象的です。

 私は福島大学で農業経済学を専攻していますので、主にドイツのビールやワイン、ハム・ソーセージ、乳製品等の生産・加工状況についてフィールドワークを通して研究し、原発事故の風評被害に苦しむ地元産業の活性化へつなげたいと考えています。


▲ドイツの春の味覚 シュパーゲル(白アスパラガス)とニシンのサラダ

▲ドイツ料理の定番 シュヴァイネハクセ(豚のすね肉のグリル)

大学について

 ルール大学ボーフムはドイツ西部ノルトライン・ヴェストファーレン州ボーフム市にある州立大学です。州のすぐ隣はオランダやベルギーです。このルール地方はかつて石炭や鉄鋼を中心とする工業地帯でしたが、現在は情報やテクノロジーへと産業転換を図っています。福島県とも新産業分野で提携していますので、県内のテレビや新聞で話題を目にする機会があるのではないでしょうか。

 大学はボーフム市(福島市をひとまわり大きくしたぐらいの市)中心部から地下鉄で約10分のところにあります。日本の大学と比べて規模が大きく、学生・教職員を合わせると約4万人にもなります。留学生も世界中から集まり、人種・文化・宗教・言語が異なる人々がお互いを尊重しながら一緒に学んでいます。

 日本からも、福島大学のほかに新潟大学、筑波大学、日本大学、関西学院大学などから留学生が来ています。しかし、広い大学の中で日本人の総数は数十名程度のようですので、会う約束でもしない限りなかなか顔を合わせることはありません。逆に日本人が少ない環境で学びたいという方にはぴったりなのかもしれません。

授業について

 大学の授業は夏と冬の各セメスターに分かれ、留学生は専門性の高い分野以外どの授業も受けることができます。授業はほぼドイツ語で行われますが、一部英語の授業もあります。

 大学には、東アジア研究学部があり日本に関する学科があります。福島大学はその学科に所属する先生が学術的なアドバイザーになってくれますので、授業の取り方についてわからないことがあれば先生に相談することができます。日本を研究している先生は日本語も話せますので、相談は日本語でも可能です。

 私は夏セメスターで講義形式の授業とセミナー形式の授業を登録しています。実際に授業を受けた感想としては、語学力のない私にとって大講義室で先生が一方的に話をする講義形式の授業は苦しいです。ドイツ語が聞き取れないため理解できず、呪文の世界に身を置いているようです。

 一方、少人数で行うセミナー形式の授業は、ドイツ語が聞き取れないことは同じですが、先生の配慮もあり事前準備をすればなんとか乗り越えられます。プレゼンテーションや論文を通してドイツ語を理解しながら学ぶことができるという意味でも、セミナー形式の授業が私には合うようです。

言語について

 ドイツ語は習熟度にあわせて初級A1から上級C2までのレベルがあります。大学にはドイツ語の語学の授業がありますが、受講する場合は最初にテストを受けレベルを確定させたうえ、レベルごとに受講することになります。そのほか、さらにドイツ語を学びたい場合は語学学校(有料)がありますので、目的に合わせて選択できます。

 また、「タンデム」といって、ドイツ語を学びたい日本人と、日本語を学びたいドイツ人が、パートナーになって言語を学んでいくシステムがあります。インプットした知識をアウトプットとして試用できる最適なシステムです。大学で双方からの申し込みを受け付けていますので気軽に利用できます。

住居について

 住居は大学寮(大学が確保している住居)の申し込みをするのが最も簡単です。留学が近づくころ大学から住居に関するメールがきますので、そこで希望を伝えます。その後、大学が住居を各学生に割り当て契約となります。大学寮を希望しなければ自身で住居を探すことになります。

 家族で住む場合は大学による住居の手配はほぼありません。大学内に数戸ゲストハウスと呼ばれる家族向けの住居がありますが、入居に関しては正規の研究者が優先となりますので、留学生へ割り当てられる可能性は低いです。私は家族と住むため、早い段階でゲストハウスを希望しましたがかなわず、最終的には大学近くの大家さんと直接交渉してアパート契約しました。ドイツは移民も多く、物件数もそれほど無いというのが実感です。

生活について

 ドイツはヨーロッパの中でも比較的治安はよいと感じます。日本と同じように夜に出歩いても問題なく、人々は電車やバスでお年寄りに席を譲ったり、荷物を持ってあげたりしています。ただし、都市部ではスリや置き引きも発生しており油断は禁物です。

 普段の生活はスーパーマーケットがたくさんありますので、買い物するのに困ることはありません。街中には新鮮な野菜や肉、チーズを売るマルクト(市場)もあります。物価は日本と同程度だと思いますが、お酒や乳製品は圧倒的にドイツの方が安いです。大学から電車で約1時間の州都デュッセルドルフには日本人コミュ二ティがあり、日系食料品店も並んでいます。

 ドイツに住んでみて驚くのはやはり公共交通機関です。福島市と同じぐらいの大きさの都市でも、一般の電車のほかに地下鉄や路面電車が東西南北へ走り、人々の住むところへはバスが出ています。そして、学生は半年ごとに約350ユーロの社会貢献料が科されますが、州内の公共交通機関は無料で乗ることができ、曜日や時間帯によっては同伴の家族も無料です。

 また、デポジットに対する考え方も斬新です。ドイツでは一般品に7%、嗜好品に19%の消費税がかかりますが、缶・瓶・ペットボトルにはさらに「プファンド」と呼ばれるデポジット料金がかかります。そして使用済の缶・瓶・ペットボトルをスーパーマーケットへ持っていくと、デポジット料金を戻してくれます。それゆえ、自然とリサイクルが成り立ち、街中には缶や瓶を自主的に回収する人も現れます。環境に配慮するドイツならではの仕組みだと思います。

▲ドイツ デュッセルドルフイベント「Japanデー」

▲イベント「Japanデー」にて福島県ブースのお手伝い(福島県の現状説明、観光PR)

ドイツでの手続きについて

 留学でドイツに到着すると、住民登録、健康保険への加入、閉鎖口座(月の引き出し金額に上限のある口座)開設、ビザ取得と様々な手続きを行わなくてはいけません。

 特に市役所で行う住民登録とビザ取得は注意が必要です。住民登録は到着して14日以内に、ビザ取得は90日以内に行う必要があります。市役所は手続きが予約制となっており、予約待ちで1か月かかる場合もあります。しかも、住んでいる地域や担当職員によって求められる書類が違うこともしばしばあります。英語が話せる職員に当たれば運がよいのですが、たいていの職員はドイツ語でしか受け付けをしてくれません。ドイツ語がわからないと通訳者を連れてくるよう言われます。

 そのため、大学がボーフム市役所用のおおまかな必要書類一覧を作成していますので、準備の参考になります。また、日によっては通訳できる人材を派遣してくれます。私も大学に相談して通訳のできる学生に同行してもらいながら手続きを進めていますが、すべての手続きが完了するのは3か月ぎりぎりになりそうです。人によっては日本で事前に取得しておくべき書類もありますので、留学が決まった際は早めの情報収集をおすすめします。

おわりに

 到着後3か月が経過しますが、まだまだドイツ語が聞き取れる、会話ができるレベルには至っていません。しかし、様々な場面でドイツの文化に触れ、日本の文化との違いを肌で感じるというよい経験ができています。

 学生兼社会人の留学生ではありますが、ここまでバックアップしていただいた国際交流センター教職員のみなさま、アドバイスをいただいた経済学研究科の先生方、ドイツ語を指導いただいた人間発達文化研究科の先生方、いつも励ましのメールをくれる同窓生のみなさまに御礼を申し上げます。