私は現在西ドイツにあるノルトライン=ヴェストファーレン州のルール大学ボーフムに留学しています。このレポートが、留学やヨーロッパに興味がある方にとって少しでもお役に立てるよう、授業・生活環境・現在と今後の目標の3点について述べたいと思います。
現在、私は大学のいわゆる講義というものを一切とっていません。その代わりに毎日5時間程度、大学付属の語学学校に通っています。何故なら正直なところ、私のドイツ語は会話するにも不十分なレベルだったため、最初のセメスターでは語学を重点的に取り組みたかったからです。大学にも留学生用のドイツ語の授業はありますが、週に1~2回しかないので、少し費用はかさみますが、語学学校を選びました。
クラスには出身国、母国語、ドイツ語学習の目的、年齢など様々な背景を持つ生徒がいます。私は22歳なので、日本の大学だと一番年上になることが多いのですが、ドイツのクラスでは若い方です。クラスメート全員がドイツ語を話せるようになりたいという同じモチベーションを持っているので毎日がとても楽しいです。
授業内容は日本の語学の授業方法とかけ離れています。私はA1という一番下のクラスにいますが、内容のほとんどが生活に最低限必要な単語や会話練習です。文法ももちろん勉強しますが、私たち(1995年生まれ)が英語を習い始めた時の授業内容とは違うと思いませんか? 章ごとに文章があり、それを予習で訳し、新しい文法や単語を覚えるの繰り返しでしたよね。 しかし、ドイツの初級の授業では会話練習に重点が置かれています。例えば病院に行った時の会話や、病気の名前等です。この授業を経験して、初めて日本の語学学習の方法が文法中心だ、と言われている本当の意味を知りました。
授業の他には平日のほぼ毎日、2~4時間ほどタンデムをしています。タンデムとは日本語を勉強している学生と、ドイツ語を学びたい学生が一緒に語学の練習をするシステムで、そこで授業で習ったことを質問したり、実際の会話で使ったりしています。アウトプットができる環境があるということは、非常に恵まれていることなので、頑張って続けていきたいと思います。
▲授業風景
私が住むボーフム市は、皆さんが中・高時代に耳にしたであろう「ルール工業地帯」に位置します。ドイツの大都会にはまだ行ったことがないので、比較は出来ないのですが、ここは緑が豊かな場所だと思います。
大学がある場所から街中までは10分程。20~30分ほどで''SHINJI KAGAWA''が所属するドルトムント、更に1時間程で州都であるデュッセルドルフ行くことが出来ます。距離感は金谷川~福島~仙台とご想像いただければ分かりやすいと思います。
ドイツに来たばかりの頃は、ビザの申請や毎日のオリエンテーションコース等で緊張した状態が続きましたが、今はとてもリラックスしています。...と言いたいところですが、当初よりは良くなったものの、緊張は続いています。(少しは緊張感を楽しむ余裕が出てきましたが...) 最近の世界治安情勢の悪化につき、どこに行っても危険は常に隣り合わせです。日本人が考える安全を基準とした場合、ドイツやヨーロッパが大丈夫ということは、犯罪に巻きこまれる確率から考えても安心できないと思っています。だからこそ緊張感を持ち続けることは、安全で良い留学生活を送るためにも、大事なことだと考えるようにしています。油断は禁物です。
物価については日本と比較すると 野菜果物・交通費→安い 衣料品・電化製品→同等 外食→高い といったところです。女子大生に人気のモッツァレラチーズは0.5ユーロ位です(日本だと300円~)。日本の食材はデュッセルドルフに行けば調達することが出来ますが、価格は2倍程度します。
また、学生は娯楽施設で優遇されることが多く、映画館や美術館、博物館、遊園地等が割引になります。ジムにも毎日行っているのですが、20ユーロ/月で通えます。
▲スーパーのレシート
▲ジムの様子
こちらに来て2ヶ月目くらいに、ずっと不満に思っていたことがあります。それは電車やバスの遅延率が高い、日曜祝日にレストラン以外の店が閉まる、トイレがない、料理が口に合わない(油分多めの食事)、ネット接続が遅い、事務手続きが雑で適当...様々なことが原因でした。でも、「ドイツに住んでる人々は価値観が違う」ということに気がついてからは、笑いに変えられるようになってきました。
ドイツの人は日曜・祝日には家族や大切な人と、公園で日光浴をしながら、ゆっくり心と体を休憩させます。話好きな彼らは、そのような時間を利用して身近な人とコミュニケーションを取っているのです。口喧嘩のような激しいコミュニケーションも見かけますが、思ったことを伝えるということは、とても大切なことです。私も、ドイツに来て感じた意見を他の国の留学生に話し、意見交換することで不満を感じることが無くなりました。
私の留学の目標は、「自分が考えるグローバル人材になること」です。私の考えるそれとは、「柔軟で多角的な考えを物事に対して適用できる人材」を指します。
留学前は「私には偏見もないし、柔軟性がある」と考えていましたが、異国にいるとそれが本当かどうかはっきりします。そしてそうなるためには何が必要かも見えてくることに気がつきました。これは、実際に体験してみないとわからないことだと思います。3か月目、やっと何が必要なのかが見えてきました。大切なことは、様々な国の人とコミュニケーションをとることです。
私は他の留学生と会話するときに英語で話すことも多いのですが、少しタブーなことも質問することにしています。何故なら、皆日本人と比べて政治の話をよく話題に挙げますし、タブーなことを私に聞いてくるからです。その度に、自分の意見を問い直す機会をもらえますし、意見を返すと、更に話が広がり、新たな意見交換が始まります。例えば、よくある恋愛の話からスタートしたのに、それぞれの文化を背景とした、人間関係のあり方の違いについてまで話が広がることもあります。このような経験を通して、自分の中に新たな考え方が生まれ、少しずつ立体的な考えになっている気がします。
▲台湾から来た留学生との食事風景
そしてやはり語学力は必要です。上記のような話をしていると必ず「あれ、これなんていうんだっけ?」という場面が出てきます。そんな時にもっとコミュニケーションをとりたい、と強く思うほど、語学の学習に意欲が湧いてきます。自分の可能性を広げるツールとして、語学は必要不可欠だということを改めて実感しています。
もうひとつ、相手の立場に実際になってみることです。日本にいるときには、ほとんどの立場においてマジョリティーにいました。昨年、移民や外国人労働者について勉強したときに、マイノリティーについて考える機会がたくさんありましたが、いくら体験談を聞いても、自分が実際にその立場でないと確認できないことが山ほどあるということを実感しました。
こちらに来てからトルコ系の人々によく「中国人!」「ニーハオ!」などと言われて面白がられたりします。(ドイツに来ればあなたは中国人なります。)そういうことが続くと、自分にトルコ人の友達が居るのにもかかわらず、トルコ人全てが東アジアの人々に対してそう思っている、と思えて、ケバブ屋さんにも怖くて行けない事もありました。それも今では、差別や偏見の本当の意味を知ることが出来た良い経験だった、と捉えています。そして、座学では理解するのに限界がある、ということもわかりました。最終的に必要なものは、何と言っても知識や経験です。福島大学で勉強したことやゼミで研修に行ったこと、旅行に行ったこと、人生で起きたこと全てがコミュニケーションを取る上での武器になります。あの時一生懸命レポート書いてよかった、あの本を読んでおいてよかった、研修で食べた食事のこと...全ての出来事が会話をする際に必ず役立ち、相手との距離を近づけてくれることに気がつきました。
今後は、10月から始まる授業の中で、東アジアに関するセミナー式の授業を取ることを考えています。そこでより専門的なコミュニケーションを取ることを目標に、上記のグローバル人材に必要なことに取り組んでいきたいと思います。また、デュッセルドルフにあるドイツの福島県人会を訪問して、福島に私の留学の経験を何かの形で還元できるように働きかけをするとともに、興味のあるエネルギーの経済についてもアプローチできるように取り組みたいと考えています。
ドイツに興味のある皆さん、語学・交換留学、旅行や、ドイツの治安について知りたいことがあれば、国際交流センターを通して私に質問して下さい!
▲Unifestの様子
▲ケバブ(Döner)
▲Karaoke Abendの様子