私はICTEという、UQ(クイーンズランド大学)にある語学学校で5週間英語の学習をし、その間、オーストラリア・ブリスベンの一般家庭でホームステイをしました。私は生まれてから今までずっと福島で生活してきました。初めて行く慣れない場所で、どれだけのことができるのか挑戦してみたい気持ちがあったのと、多民族国家・多文化主義と言われているオーストラリアで生活することによって、自分の視野を広げられるのではないかと期待を抱いたことから今回の研修への参加を決めました。
ICTEの授業は全て英語でしたが、先生の英語は聞き取りやすかったです。授業は座学よりも話す活動がほとんどで、最初の方は言葉がうまく出てこず、もどかしい思いをすることが多かったです。日本が春休み期間中ということでクラスメイトの7、8割は日本人でしたが、日本語を使えば一瞬で言えることも英語で話そうとすると倍ほどの時間がかかり、常に頭を使うので放課後はかなり疲れていました。
それでも授業を受けているうちに、コミュニケーションに対する苦手意識は次第に薄れました。クラスには日本人以外には中国、トルコ、インドネシア、韓国、台湾の方がいましたが、授業のトピックが変わるたびに文化や価値観の違いを発見できて面白かったです。中国の方とは、英語を用いながら日本語・中国語をそれぞれ教え合ったりもしました。授業で学んだことは、現地の学生やホストファミリーと交流をするときに役立ちました。
最初は湿気と日差しの強さに驚きました。2月は暑い日が続きましたが、3月は秋に近づいて気温も少し下がり、雨が降ることも多かったです。
ブリスベンはバスが発達していて、バス停が網目状に張り巡らされており、車や自転車が無くても、バスを使えば様々な場所に行くことが出来ます。福島で生活している私にとっては本数も多く感じられました。公共交通機関としてフェリーも運行しています。バスより揺れが少なく快適で、夕方~夜に乗ると夕焼けや夜景、夜風を楽しめるのでおすすめです。バスも電車もフェリーも共通のICカードを使って乗れるので非常に便利です。
《ブリスベン中心街のバス停》
《フェリーから見た夜景》
ホストファミリーは、ピアノと読書とワインが好きなお父さん、ダンスとリノベーションが好きなお母さん、ギターとゲームが好きな息子さんで、それぞれが自分の趣味に没頭して毎日を楽しんでいました。私もそんな家族に触発されて映画を沢山見に行ったり、時々ピアノやギターを弾かせてもらったりして、日本にいるときよりも趣味の活動が充実していました。
夕食時に家族とおしゃべりをするのは私の毎日の楽しみでした。私と息子さんの歳が近いこともあり、仕事や人生というような大人な話題が多かったので、興味深かったです。また、お父さんがジョーク好きで、毎日のように嘘か本当かわからない話をしてくれて、笑い過ぎて食事が中々進まないこともありました。ユーモアと愛に溢れた素敵なホストファミリーのおかげで、心身ともに健康で豊かな生活を送ることが出来ました。
《ホストファミリーの一員の猫》
UQの日本文化クラブのwasabiの活動では、UQや近隣大学の学生と出会うことが出来ました。オーストラリアは移民が多く、人種も宗教も様々で、それぞれの人が独自のバックグラウンドを持っていました。そういうこともあり、日本にいるときよりも自分自身についての話をする機会が多かったです。会って間もない人が真剣に自分の話に耳を傾けてくれたのは非常に嬉しかったです。私も彼らの人生や、考えを聞くことによって、多様な文化や価値観があるということを理解しました。オーストラリアは日本のように外国人を避けるような雰囲気が無く、日本の中に閉じこもっていたら会得出来ないような生の異文化理解を経験することが出来ました。言葉は拙くても大体の雰囲気で分かり合えたり、友達になれるのは不思議でした。
オーストラリアに行く前は、差別されたらどうしよう、日本は嫌われているから嫌な思いをするだろうな、というようなことを考えていました。しかし、実際に行ってみると、困っているときに助けてくれる人や気さくに話しかけてくれる人が多く、嫌な思いをすることは一度も無かったです。世界には親切な人が沢山いるのだということを実感しました。そして、多様性が受け入れられているオーストラリアの社会を体感してから、日本の社会は意外と生きづらかったのだと感じました。外国で生活することによって、日本を偏見無く、色眼鏡を外した状態で見ることができ、日本への学びや気づきが深まりました。
今回の研修の終了はゴールではなく、むしろスタートだと私は思います。この経験はこれからの言語学習の良いきっかけになりました。英語しか話さない状況を日本で作り出すのは極めて困難です。オーストラリアに行き、母語が通じない環境で生活したからこそ、人と人との意思疎通を可能にする言語の素晴らしさに気づきました。これからも、音楽や映画などといった自分の好きなことと絡めながら、英語とそれ以外の言語にも触れていきたいと思います。
今回の研修で学んだこと、自分の肌でもって感じたことは数えきれないほどあります。オーストラリアに行かせてくれた両親、国際交流センターの方々、一緒に研修に参加した5人、そして、オーストラリアで関わった人たちには非常に感謝しています。