

2024年8月下旬から2025年5月中旬までの9カ月間、アメリカ・アーカンソー州にあるオザークス大学で交換留学を行いました。期待と不安が入り混じる中で始まったオザークス大学での留学生活は、数多の挑戦が有り、多くの学びと成長をもたらしてくれました。本レポートでは、2025年春学期後半について振り返ると共に、この留学を通して得られた学びや気付きも交えて、留学生活を総括いたします。
厳しい寒さも次第に和らぎ、3月中頃からは大学内外の様々な場所で色とりどりの花が咲き出し、穏やかな春の訪れを感じられるようになりました。季節が進むにつれて気温も上がり、5月頃になると徐々に暑さが増してきました。緑が一層深まったキャンパスを歩いていると、ふとした瞬間に、昨年の8月下旬に初めてオザークス大学のキャンパスの地に足を踏み入れた時の光景がよみがえり、この地で学び、生活することに対して、胸を高鳴らせていたあの頃のワクワクした気持ちを思い出しました。![]()
▲グアテマラ出身の友人と、大学近くのお店に買い物に行く途中に通学路で見つけたマグノリア![]()
▲大学内を散歩しているときにみかけたマメナシ
春学期の後半は、仲の良い友人たちと過ごす時間が更に増えました。大学で開催されたイベントで友人と活動した際に、印象深く残っているものをご紹介いたします。
一つ目は、無地の旗に自由にデザインを描くイベントです。このイベントは、グアテマラ出身の友人と一緒に参加しました。私たちの友情の記念になるようなデザインにしたいと思い、じっくりとアイデアの出し合いをしました。その中で、思い付いたものが、お互いの国の国旗を描くことでした。無地の旗を半分に分け、一方には日本の国旗を、もう一方にはグアテマラの国旗を描きました。言葉や文化の違いを越えて築いた繋がりを、ひとつの旗に表すことができたこの作品は、特別な思い出になりました。
二つ目は、動物のぬいぐるみを選んで、ビーズや紐を使ってデコレーションするワークショップです。友人たちと童心に帰りながら、製作を楽しむことができ、完成したぬいぐるみは、留学生活の思い出として大切な宝物になりました。
三つ目は、大学の広場で、タコスを片手に映画を鑑賞するイベントです。夕暮れ時の心地よい風と、笑い声が響く穏やかな空間の中で、友人たちと肩を並べて過ごした時間は、まさに特別なひとときでした。
どのイベントも、日常では体験できないことばかりで、友人たちとの絆を深め、かけがえのない思い出を共有することができました。こうした時間の一つひとつが、留学生活をより彩り豊かなものにしてくれたと感じています。![]()
▲日本とグアテマラ、ふたつの国旗をひとつに描いた友情の旗![]()
▲世界に一つだけのぬいぐるみ![]()
▲映画とタコスの夜
春学期も残す所、あと一週間ほどになった頃、グアテマラ、メキシコ、ホンジュラス出身の友人たちが、サプライズでお別れパーティーを開いてくれました。お菓子を囲んで映画を観たり、思い出話に花を咲かせたりと、温かな時間を過ごしました。中でも心に残ったのは、壁に飾られた沢山の写真とメッセージが詰まった手づくりのアルバムです。
そのアルバムを手にした瞬間、この1年間を共に過ごしてきた友人たちとの数々の思い出が一気に巡り、懐かしさや嬉しさと同時に、別れの寂しさが込み上げました。壁に飾られた写真を眺めながら、友人たちとこれまでの出来事を語り合った時間は、忘れられないひと時となりました。![]()
▲友人達とのパーティで記念ショット![]()
▲たくさんの思い出が詰まった手作りのアルバム
感謝の気持ちを込めて、私からもお返しとして大学のチャペルでピアノを演奏し、日本のお菓子を振る舞いました。演奏させて頂いた曲は「カントリーロード」、「エリーゼのために」、「ア・ホール・ニューワールド」の3曲です。お菓子も演奏もとても好評で、友人たちが喜んでくれたことは、率直に嬉しかったです。感謝の気持ちを伝えることが上手くできたのではないかと思います。![]()
▲チャペルでのピアノ演奏会![]()
▲日本のお菓子を囲み、和やかな時間を過ごした
「言葉の壁を乗り越えて、自分の考えを伝えられるだろうか?」これは、私が留学前に抱いていた大変大きな心配事でありました。オザークス大学での1年間の留学生活は、その問いへの答えを探しながら歩んできた時間でもありました。留学当初は、英語での授業や課題の多さに圧倒され、自分の考えを伝えたくても言葉が出てこないもどかしさに何度も直面しました。その度にひとりで悩み、悔しさを抱える日々が続きました。
そんな中、支えになってくれたのが、中央アメリカ出身の友人たちでした。ずっと私の授業について気にかけてくれたり、悩みを聞いてくれたりと、親身に寄り添ってくれました。中央アメリカの多くの国々ではスペイン語が母語であり、私と同様に英語を第二言語として学ぶ立場でした。だからこそ、言葉の壁にぶつかったときの苦しさや、母国を想う気持ち、ホームシックのつらさなどを分かち合い、励まし合うことができました。彼らの存在があったからこそ、私は何度も前を向くことができたのだと思います。
そうして、友人たちとの会話を重ねていく内に、少しずつ自分自身が変わっていくのを感じるようになりました。間違いを恐れずに話してみること、相手の言葉に丁寧に耳を傾けること、そして何より「伝えたい」という気持ちを大切にすることで、自分の言葉が相手に届いていると感じる瞬間が増えていきました。
やがて、友人たちと自然に会話を楽しめることも増えていき、授業でも自分の考えを口にできるようになった頃、「自分の言葉で伝えたいことを表現できている」と実感できるようになりました。
この9カ月間は、単に語学力を伸ばすためだけの時間ではなく、自分自身と向き合う日々でもありました。異なる文化の中で過ごすことにより、数多の出会いや学びの機会に恵まれ、自分の視野が大きく広がったと実感しています。
最後に、留学の相談を始め、留学中においても、いつも丁寧なサポートをしてくださった福島大学国際交流センターの職員の皆様、そして遠く離れた場所からいつも見守り、支えてくれた友人と家族に、心から感謝の気持ちを伝えたいです。本当にありがとうございました。