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留学体験記

【中国】留学報告書⑤

【派遣先】河北大学 【留学期間】平成27年3月~平成28年2月
人間発達文化学類3年 高安 健次



日本と中国の教育状況の比較

 福島大学で教育学を勉強していることもあり、興味本位で中国の教育事情について調べてみた。調査方法は、河北大学の日本語学科の2クラスに協力してもらってアンケートをとり、その中でも仲の良かった友人らに聞き取り調査をした。

(1)授業時間の違い

 中国の学校は朝8時から始まる。またお昼12時になれば、午後2時まで昼休みとなっている。それ以外のスケジュールは小学校までは日本と中国大差が無かった。ただし、中学校と高校でスケジュールが日本の学校と大きく変わってくる。

 中学校・高校では日中の授業が終わると、そのあと自習時間というものがあり、学校の教室で自習をする。それが終わり帰宅を出来るのは夜9時以降となっていた。また学校によっては早朝6時から体力強化自習と言って、ランニングが課される。部活動は無く、日本と比較すると学校の勉強に拘束される時間が非常に長いことが分かった。

 このような教育状況の理由は、中国が学歴社会で、受験競争が過酷であることだ。もし高校や大学に入れなければ、その後の進路は大きく狭まる。地域によっては大学に入れなければ、すぐに結婚をして生計を安定させる必要があるとこもあるという。逆に大学を卒業さえすれば、北京等の大都市でも就職が可能になるのだ。

(2)交流した河北大学生の傾向や三菱電器・長城汽車の派遣技術者の方たちとの交流から考える現代の中国式の教育スタイルの影響と問題点

 このような教育スタイルの影響が、日本の大学生と河北大学の学生を比べると顕著に出ている。

 メリットとしては、どの学生も集中力の持続時間がかなり長いことだ。個人によって違いはあるが、河北大学の多くの学生は、授業終わりも寮に帰宅するのではなく、空き教室を探して高校生活と同じく夜9時までずっと自習をしている。受験生活時代の生活スタイルが習慣になっているのだ。このような学生は、少なくとも私のいる福島大学ではほとんど見ない。

 デメリットとしては、マニュアル型の思考が習慣化されてしまい、創造力が乏しいことだ。受験向けの詰込み型の勉強は、どの問題にも明確な解法があり、それを自分で探し出すよりも、頭に覚えこませるとういものだ。つまり、このタイプの勉強ばかりをすると、答えの無い問題、自分で創意工夫する問題に対応できなくなる。私が交流した河北大学生の中で、自由作文が苦手だという人が非常に多かった。自由に文章を書く問題が出されても、何を書いていいのか分からず、ペンが進まない、あるいはインターネットを活用して類似問題と解答を探すという様子だった。

 留学中に、日本から派遣されて三菱電器や長城汽車で技術者として働いている方たちと交流する機会があった。彼らの話では、彼らの会社で働いている中国の社員は設計図を見てそのまま真似して製品を作るのはうまいという。ただ、その設計図の構造や理論を理解しておらず、それ以上の製品を作り出すことが出来ないと嘆いていた。ここにも、中国の教育事情の影響が顕著に出ているなと、私は感じた。

(3)「中国の学生にも青春を」 ある河北大学の学生が語った夢見る中国の教育の変化

 中国の若い世代では、日本のマンガ・アニメが非常に人気である。中でも「テニスの王子さま」「スラムダンク」「黒子のバスケ」というような学校の部活をテーマにした作品は、中高で受験勉強に拘束されて部活もおろか、日常的に遊んだりする時間が無い中国の学生からすると、新鮮で非常に羨ましいという意見が多い。特に学校の部活動に憧れを抱く学生も少なくない。

 日本語学科の学生で、将来教育を勉強して中国の教育を変えて日本みたいに学生が青春を満喫できるようにしたいと語っていた友人がいる。彼女が言うに、学生時代は勉強ばかりしていて楽しい思い出が少なかったという。彼女はアニメや日本のドラマを通じて、日本のような学生生活に憧れを抱いていたと言っていた。確かに勉強は受験や就職のために必要かもしれない、でもそれだけにこだわって若い貴重な時間を費やしてしまうのはもったいないし、人生全体で見てそれは楽しいことではないと言っていた。

 今の学生が自分の時間を楽しめていないというのは、若い世代だけの意見ではない。今の親~祖父母の世代の方たちも、自分の子供時代と比べて今の子供はかわいそうだと口々にする。(とは言っても、やはり子供にはいい大学に入ってほしいので親心は大変である。)

 このような状況を改善するには、あまりにも受験戦争が激化している社会全体を変えていなければならない。中国の経済発展は著しく、地域によっては日本の経済を超えてしまっているのではと感じてしまうところもあった。ただ、私からすると、今回の報告書に記載していない他の中国で見聞きした経験も含めて、経済の発展に.教育環境の発展が出遅れてしまっていると感じてしまう。そんな中でも、中国の教育の変化を望む声はひしひしと上がっており、私の中国の友人たちなら将来変えてくれると期待している。

マインドセットの重要性

 留学生活では、価値観の違いや新しいことへの挑戦、人間関係等で日本の生活よりも大きなストレスを受けることになる。事実、私も自分がストレスなど精神的に強いと思っていたが、留学生活中に数々のトラブルが起きる中で、精神的に耐えきれず、毎日3~5回喉に手を入れて吐いてしまうことがずっと続いていた。ただ交換留学は1年間と短い期間であり、出来ることならその時間を最大限に活用したいというのも正直なところだ。

 そこでこれから留学に行く学生にお勧めしたいのがマインドセットだ。これは帰国後に読んだ書籍で知ったものだ。『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(著:ケリー・マクゴニガル 訳:神崎朗子 大和書房)この本では、ストレスに対する考え方を変えることで、逆にストレスによって自分を強くするという内容が書かれている。この本に限らず、留学を決めてから渡航までの間、留学先の言語を先に勉強するのもいいが、私としてはそれよりもメンタル管理の本を読んで勉強してほしいと思う。なぜなら、例えば留学で外国語能力が上がったとしても、将来就職したとしてもその能力を使うのは仕事の一部分だけであり、さらに言えば、その後の進路の選択ではその言語能力を使わないということもあり得る。それに対しストレスは、どんな人生洗濯をしても一生付き合っていかなければいけない。メンタル管理を勉強することは、間違いなくその後の人生に影響し、留学前に事前に勉強しておくことで留学先のストレスにも対応できるばかりか、留学生活の活動範囲を広げ、質を向上させ、言語の上達だけでなく人間としての全体的な成熟も促進できる。

 限られた時間をうまく使うため、留学生は様々な手段を試行錯誤すると思う。その手段の1つとして、私からはマインドセットをお勧めしたい。

中国留学をやりとげた青年

▲中国留学をやりとげた青年

留学を終えての今後の方針

 最後に今回河北大学に留学した理由と、その経験を活かした今後の方針について話しをしたい。

 まず河北大学に留学した理由だが、実は最初から中国に留学をしたかったわけではない。留学前はただ漠然と海外で経験を積みたいという気持ちだけがあり、当時の留学先の姉妹校で河北大学の定員が空いていたこと、たまたま1年生のときに第二外国語で中国語の初級の授業を履修していたこと、金銭的に余裕が無かったことで河北大学を選択した。中国への留学は最初から予定していなかったため、2年生で受けることができる中国語の中級の授業も履修していなかった。河北大学に留学を決めてから、せっかくならと色々とやりたいことを決めていった。

 今後の方針だが、中国語が時折中国人と間違われるほど上達したので、この能力をつかって学生業のかたわらフリーの翻訳家や通訳の仕事をしたいと考えている。そして、この留学生活で中国語能力の上達よりも私にとって有益だったのは、留学中に数々のトラブルに巻き込まれて精神的により強くなったこと、トラブルに付随する人間関係から処世術が学べたこと、最後に1年間の濃い経験を通じて自分の目標が再認識できたことだ。中国語能力を活用したいという気持ちもあるが、それよりもこの経験を活かし、自分の専門の学業に励んでいきたい。

◎今回の留学での簡単な成果報告

  • 前期:初級Bクラスで中国語を履修し、中間テスト後に中級Aに進級して履修。
  • 後期:高級クラスで中国語を履修。
  • 2015年10月23日美丽河北全省高校留学生汉语演说比赛(河北大学初赛)に参加。優秀賞。
  • 2015年12月6日HSK最高級(6級)を受験。スコア204/300
  • 2015年12月6日HSKK最高級(高級)を受験。合格。

◎補足事項

 中国はその国土の広さもあり民族の種類も多い、方言がいくつもあり、地域によって人柄も大きく変わってくる。今回の報告書では保定市、北京、西安で交流経験ももとに作成した。そのためそれ以外の地域については想定していないため、注意をしてほしい。

  • 写真提供 柏木雄弥